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26分の短編映画が劇場公開されるまで|『イエロー・マシマシ・ラプソディ(仮)』整音・5.1chミックスの実例

7 分前
読了時間: 7分

10月31日(土)、新宿K's cinemaで『イエロー・マシマシ・ラプソディ(仮)』の劇場公開が始まります。


上映時間26分、制作費60万円。題材はマシマシ系ラーメン。



Hybrid Sound Reformでは、この作品の整音・ダイアログ調整・5.1chサラウンドミックスを担当しました。


この記事では、作品の紹介とあわせて「短編映画を劇場で上映するとき、音で何を準備したのか」を、実際の工程に沿ってまとめます。短編の劇場公開や映画祭出品を考えている監督の参考になればうれしいです。



『イエロー・マシマシ・ラプソディ(仮)』とは


この世には二種類の人間が存在する──大切な人と優雅な食卓を囲む者と、己の全てを賭け孤独な闘いに挑む者である。

齋藤允宏監督による、ラーメンをめぐる26分の短編エンターテインメント。馬鹿騒ぎと悪ノリが全開の作品です。


受賞・選出


・第20回ジョグジャ・ネットパック・アジアン映画祭2025 公式選出


・第10回 福井駅前短編映画祭 優秀賞


・X BORDER 2025「Creator Award」作品部門 優秀賞


・第12回日本セルビア映画祭 特別賞


大阪・関西万博のセルビア館でも特別上映されました。



出演:幸知正悟、小池樹里杏、青山一澄、ならた(プロポーズ)


上映情報


東京:2026年10月31日(土)〜 新宿K's cinema(レイトショー)


大阪:11月14日(土)〜11月20日(金) 第七藝術劇場



予告編





短編でも5.1chにするべきか


結論から言うと、短編かどうかではなく、作品の性格で決めるのがおすすめです。


5.1chが効きやすい作品


・群衆、騒ぎ、店内のざわめきなど「場の空気」が主役になる


・効果音(SE)やBGMを多く重ねる


・劇場で観客を「巻き込みたい」


ステレオで十分なことが多い作品


・会話劇が中心の日常芝居


・音数が少なく、セリフを静かに聴かせる


・配信・オンライン上映が主な出口


『イエロー・マシマシ・ラプソディ(仮)』は、馬鹿騒ぎと悪ノリが持ち味の作品です。ラーメン店の熱気や叫び声に観客が囲まれる感覚が、そのまま作品の面白さにつながると判断し、5.1chで仕上げました。


反対に、シンプルな会話劇で日常の芝居を見せる作品なら、5.1chにしなくても作品の良さは十分に伝わります。その分の予算と時間を、セリフの整音に回した方が効果的なことも多いです。


素材の状態:ステレオガンマイク中心の収録


受け取った素材は、編集ソフトから書き出したAAFでした。



現場の録音は、冒頭の夫婦のシーンを除いてピンマイクがなく、ステレオのガンマイクが中心です。自主制作の現場ではよくある構成ですが、整音の難しさはここに集まりました。


役者ごとの地声の大きさの差:声の大きい役者はよく抜け、声量の小さい役者は環境音に埋もれる。同じ距離で録っていても、聞こえ方がそろいません。


セリフだけを取り出しにくい:ピンマイクがない分、騒がしいシーンほどセリフと周りの音が同じトラックに混ざっています。


声量差の問題については、別の記事で詳しく書いています。



一番時間をかけたのは「ラーメンバトル」のシーン


26分の短編なので、作業は比較的軽いと最初は考えていました。実際には、効果音とBGMの入れ込みが多く、監督の音へのこだわりも並外れていて(いい意味で)、長編に近い密度の作業になりました。


なかでも時間をかけたのが、作品のクライマックスにあたるラーメンバトルのシーンです。騒ぎ・叫び・すする音・BGMが一度に鳴る場面で、勢いを殺さずに、セリフも聞こえる状態にする必要がありました。


どれか一つを整えすぎると、作品の持ち味である勢いが消えてしまう。かといって、セリフが埋もれれば話が伝わらない。このバランスを、シーンごとに監督と確認しながら詰めていきました。



試写を3回重ねて仕上げた


短編の劇場公開で特に伝えたいのが、試写の大切さです。この作品では、仕上げの途中で3回の試写がありました。


① 初回の試写会

最初の仕上げで上映。評判は悪くなかったものの、関係者から「もっとセリフの抜けを良くしたい」という要望が出ました。


② 上映館での試写

劇場公開が決まったあと、実際の上映館で、①の要望を反映した版を上映。そこで見えた課題を、プロデューサーも交えた終日の立ち会いで調整しました。


③ 試写室での最終チェック

さらに終日の立ち会いで、各シーンのメリハリや盛り上げのためのBGMを調整。公開直前に、試写室で最終版を確認します。


編集スタジオのスピーカーと劇場の再生環境では、セリフの聞こえ方も低音の響き方も変わります。上映館で一度流してから直すという工程を入れられたことが、最終的な仕上がりを大きく左右しました。


最初の作業期間は約2週間。そこに終日(約8時間)の立ち会い編集を複数回加え、監督・関係者とかなりの回数のやり取りを重ねています。


納品したもの


・5.1ch:劇場上映用のDCPに組み込む音声


・ステレオ(2ch):映画祭やステレオ環境での上映用


海外を含む映画祭で何度も上映され、大阪・関西万博のセルビア館での特別上映にも、この音声が使われています。



短編を劇場公開する監督へ:音で準備しておきたいこと


この作品の経験から、短編の劇場公開や映画祭出品を考えている方に伝えたいことをまとめます。


1. 5.1chにするかどうかは早めに決める


作品の性格で判断します。迷ったら、まずステレオで仕上げて、劇場公開が決まった段階で5.1chを作る方法もあります。


2. ピンマイクがない素材ほど、整音の時間を多めに見込む


ガンマイク中心の素材は、セリフを取り出す作業に時間がかかります。


3. 上映館での試写を、スケジュールに組み込む


劇場で一度流してからの修正が、いちばん効きます。


4. 立ち会いの日を確保する


監督が同じ場所で音を聴いて判断できる日があると、調整の往復が大きく減ります。


5. 予算は「作業時間」から考える


短編でも、効果音・BGMの量やこだわりによって作業量は長編並みになります。


40〜60分の作品の作業時間と料金の考え方は、こちらの記事にまとめています。




監督より


齋藤允宏監督に、音の仕上げについてコメントをいただきました。


Q. 音の仕上げで、一番印象に残っている場面はどこですか?


後半、一気に音圧が上がる瞬間です。作品全体の推進力としてテンションアゲアゲです!

Q. 劇場で観る方に、音で注目してほしいところはありますか?


整えすぎない、ガレージロックみたいな音に仕上がったと思います。ライブハウスに来るつもりで、お越しください。お待ちしております!

Q. 5.1chで仕上げてみて、作品の見え方は変わりましたか?


映像の半分は音で出来ているので、5.1chにしたことでステレオ版と全く違うモノになりました。音を浴びる、体感できるモノとして生まれ変わった気分です。


作品への想いは、noteに書きました


なぜこの作品を引き受けたのか、整えすぎると死んでしまう音があったこと、目指した「音の塊」については、noteにまとめています。




劇場でぜひ


26分間、ラーメン店の熱気の中に放り込まれる感覚を、劇場の音で体験してもらえたらうれしいです。


東京:10月31日(土)〜 新宿K's cinema(レイトショー)


大阪:11月14日(土)〜11月20日(金) 第七藝術劇場



11月6日(金)からは、同じく整音・MAと5.1ch仕上げを担当した『冤罪のつくりかた』が池袋シネマ・ロサで公開されます。




短編・長編の劇場公開や映画祭出品に向けて、音の仕上げを相談したい方へ


作品尺や素材の状態に応じた料金の目安は、料金表をご覧ください。まずは素材の状態を確認するところから対応します。





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