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初めてMA・整音を外注する(学生)映画監督が理解しておくべき「音関連」の作業工程

自主制作から劇場公開作まで、一人で整音〜最終ミックスまで仕上げている自称サウンドリフォーマーの山川@HSRです。DAWはPro Tools、修復はiZotope RXを中心に音楽のミキシングにも使用する様々なプラグイン(EQ/コンプ/リバーブ/ノイズサプレッサー等)を駆使して、素材を“映画の音”に育てるのが仕事。ありがたいことに国際映画祭での受賞歴(ベストサウンドデザイン賞)、国内映画祭でのグラプリ作品に関わるなど、映画祭審査、一般の方が観劇する劇場公開の両目線で「伝わる音」を大切にしています。

自主製作映画

映画系の学校でも整音やMAは基礎知識しか学べないケースが多く、映画制作のキャリアが短い方や学生さんの場合、予算感やその作業詳細(どれくらい時間を要するのか)を知らなすぎる監督さんもぶっちゃけ多いです。

ここでは、日本の映画祭で使われることが多い40〜60分尺・ステレオ2.0の中編ショートムービーを例に、どんな工程にどれだけ時間がかかるのかを、はじめて外注される監督向けにまとめます。

 

※実際の所要時間は素材状態と演出意図で上下します。あくまでも目安として読んでください。

  • 必要素材:ピクチャーロック映像(作業用のやや軽量のMp4)、OMF/AAF、現場WAV(アウトテイクも含む)、効果音/音楽素材、台本・編集決定稿。

  • セッション整備:トラック編成、バス/ルーティング、ラウドネス基準設定、タイムコード・サンプルレート整合。

  • 荒チェック:ノイズ/歪み/かぶり/ブレス/部屋鳴り/レベル差を洗い出し。

Adobe Premireなどの動画編集ソフトから音声トラックのみProToolsに読み込めるOMF / AAF トラックの整理もしてあると、​作業効率が格段に変わります。バラバラすぎる場合は素材の判別の効率が落ち、見積にも大きく影響します。

映画の主役はセリフ。ここがクオリティの9割を決めます。自主制作の場合はマイク本数も乏しいため、セリフに同時録音されている環境音のバランスなども考慮しながらベターなバランスでの処理を行います。

  • クリップ整理:ベストテイク選定、カットつなぎのクロスフェード、口形とのスリップ微調整。

  • RX修復:De-click / De-clip / De-plosive / Voice De-noise / Spectral Repair / De-reverb。
    ※やり過ぎると変な音になるので、シーンごとに閾値を変えつつ“ナチュラルなトーン”を残します。

  • トーン合わせ:マイク違い・ロケ場所違いをMatch EQやルームトーン敷きで均す。

  • 緊急ADRの提案:致命的に聞き取れない箇所があれば、アウトテイク素材からはめ込み直したり、候補抽出のみ提案(収録は応相談)。

水で読む
  • BG(環境):街/室内空調/田園/雨風などを数層レイヤーで“空気”を作る。シーンの温度・距離感を調整。

  • FX(同期効果):ドア、衣擦れ、紙、足音、小物。ライブラリ+必要に応じた軽フォーリーで画の説得力を補強。

  • 演出デザイン:主観表現、モンタージュ、回想など、音で語る要素を差し込む。過度なLFE的誇張は避け、ステレオ画角で成立させます。

  • 入出タイミング・フェード設計、被り対策の帯域整理、必要に応じてサイドチェインでセリフ優先の隙間作り。

  • 音色/広がり:M/S処理やリバーブで舞台を整え、**“音楽が前に出る場面”と“引く場面を演出ノートに沿って配分。

  • セリフとの被り具合や演技感情に応じてのボリュームコントロール​、フリー素材を繋いだ時のノイズなども処理。

  • ステム別(DX/BG/FX/MX)でノイズフロア・ダイナミクス・定位を整え、場面ごとの違和感のない繋がりを作る。またここで主演を中心に俳優の声のイコライジングなども行い、より見せ場での出音を洗練化。

  • トーンとラウドネスをシーン跨ぎでならし、ピーク・平均感を映画基準へ寄せます。

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きょうだい映画「ふたり」(2021) 

初回上映会で反省となった音声を映画祭用にブラッシュアップをしたいという監督からの要望で担当した作品が、「神戸インディペンデント映画祭2021」でグランプリを受賞。

​マドリード国際映画祭2023でサウンドデザイン賞を受賞
マドリード国際映画祭2023ベストサウンドデザイン賞

「安楽死のススメ」岡崎育之助監督 

整音・効果・ミックスを担当した長編ブラックコメディー映画「安楽死のススメ」が国際映画祭で「音声品質全般の評価」であるベストサウンドデザイン賞を受賞しました。

  • セリフの可聴性最優先。次に音楽と効果。視線誘導に合わせてダイナミクスを呼吸させます。

  • 監督試写→メモ反映:1回転を基本に、重大な演出変更がなければ軽微修正で着地させます。

  • ポップ/クリック/ノイズ再点検、黒味・無音部のレベル管理、ラウドネス最終測定。

  • 納品物:プリントマスター(WAV 24bit/48kHz Stereo)、主要ステム(DX/MX/FX/BG)生成。

​※ステムとは編集済みトラックの「セリフ」「アンビエンス」「音楽」「効果音」などを別々に書き出し、本編以外の予告編などで使用するためのパラアウト素材を指します。

合計:約39〜81時間(撮影環境が静か・マイク運用が安定しているほど短縮)。
最も時間を食うのはダイアログ修復とBGレイヤー作りです。BGMなどは監督さんもイメージしながら配置しているので音量調整以外はほとんど手をつけないこともあります。

​自主制作レベルの予算だと複数カメラを回しての撮影はほとんどないため、同じシーン内でもカットアングルが変わることで背景音が微妙に変わってしまってしまうケースも非常に多く、とても繊細で高度な編集技術が必要。制作に関わらない素人が映画やテレビと遜色ない普通に見れる水準まで素材の隅々を洗練化させます。

  • 「ノイズは一発で消せる?」 ― いいえ。瞬間ごとに設定が違うため、地道な手作業が中心です。

  • 「BGMを足せばセリフが聞こえる?」 ― 逆。中高域が被るので、帯域整理やサイドチェインが必要。

  • 「編集の直しは少しだけだから大丈夫?」 ― ピクチャーロック後の再編集は、音作りが丸ごと後戻りします。

  • ピクチャーロック厳守(最重要)。

  • 誰が見ても配置に意図がある編集プロジェクトの整理(aaf,omfは基本的に動画編集データの音声タイムラインが再現されます、ラベリアマイクやガンマイク、BGMなどの配置混在していると第三者には理解が難しく、1素材ごとに細かな検証が必要になり工数が倍増。

  • **“重要なセリフ3選”**を各シーンで教えてください(音量・抜けの基準が定まります)。

  • 目指す音の参照が(タイトルとタイムコード)を1〜2本。

  • 現場の静音配慮(空調・冷蔵庫・道路・反射音)。後工程の数時間〜十数時間が浮きます。

  • 個人受注(私のような一人完結型):40〜60分・Stereo 2.0基準で、内容と素材次第ですがおおむね8〜20万円台に収まることが多いです(修復重度・追加ADR・大幅リテイクは別途)。

  • 大手ポスプロ:ブース・スタジオ・アシスタント・立会い稼働などの固定費が重なるため、60〜150万円超になるケースも珍しくありません。

  • いずれも「早い・安い・うまい」の三立は難しく、素材のクオリティと編集確定度が見積の肝です。

※私は一人体制+受賞歴ありの実践知で、コストを抑えつつ**“映画として観やすい音”**に仕上げるのが強みです。まずは素材の一部を拝見し、**無料の初見診断(短尺)**で難所と優先順位をご提案します。

  • 受領〜荒整音:3〜5日

  • プリミックス〜本ミックス:2〜4日

  • 試写→最終:1〜2日
    (合計1.5〜2.5週間目安/修正回数・同時進行案件で変動)

​個人請けですので、少なくとも1ヶ月くらい前に打診いただけないと、上記の時間を確保するのが困難ですのでお早めにご相談ください。

利用いただいた映画クリエイターの声♪

「映画『よみ芝居』監督」/ 戴雨林 氏のコメント
山川さんは私の修士研究の成果である長編映画『よみ芝居』の整音とミキシングを担当してくださいました。このプロジェクトは主に学生で構成されたチームが担当し、録音からポストプロダクションまで多くの課題がありました。映画の尺が2時間20分と長く、昭和40年代という時代設定であるため、山川さんには膨大な作業量をお願いしましたが、各問題を丁寧に解決し、作品に深みと明瞭さをもたらし、時代感を完璧に再現してくださいました。
セリフのリップシンクの修正や背景音のバランス調整など、映画の客観的な質を高める作業から、映画の情緒的表現まで、細部にわたり丁寧に対応していただきました。また、私の抽象的な要望に基づき、具体的なサウンドデザインを施し、映画に革命的な変化をもたらしました。山川さんの専門知識と創造力に感謝し、映像・映画クリエーターたちに強く推薦します。将来的に再び映画プロジェクトを手掛ける際には、ぜひ山川さんと再協力を望んでいます。この場を借りて、心からの感謝を表します。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!
  • セリフ=物語の背骨。

  • 空気(BG)=場面の温度。

  • 音楽・効果=感情の舵取り。

​この三つの呼吸を整えるのが整音。手間はかかりますが、観客の理解度・没入度・作品の品位が確実に上がります。初めての外注でも心配無用。**難所は私が背負います。**作品の狙いを遠慮なくぶつけてください。


**「聞き取れる」から一歩進んで「伝わる」へ。**一緒にベストな音を作りましょう。

ショートムービー作品の整音・MIXは、HybridSoundReform.comへご相談ください。自主制作映画の場合は収録詳細(同時使用マイク数や作品の詳細)を詳しくお知らせください。フルスペックのミックスや5.1ch仕上げ、効果等の付加作業が必要な際は別途プラス料金となります。

HybridSoundReform.comは音質改善に特化したサービス。作品に付加価値をつける繊細な音作りを提供します。都内近郊なら対面での打ち合わせや仕上げの立ち会い作業も対応も可。完成尺40分以上の作品は最低1ヶ月前からの予約必須。お気軽にご相談ください。

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