iZotope RX最新版のオーディオレストレーション機能
幅広い音声コンテンツの修復・改善を手掛けるハイブリッド・サウンド・リフォームでは様々な音声コンテンツの整音・修復を手がけています。それを行うためのアプリケーションは米国iZotope社のRXという音声修復専門ソフト。
映画のポストプロダクションやトップミュージックアーティストのエンジニアの定番ツール
プロの映画コンテンツやレコーディングでは定番の「魔法の修復」ツール、RXはどんな機能があるのか音声編集に詳しくない初心者にもわかりやすく解説します。
iZotope RXオーディオリペアツールとは
iZotope RXは、音声のクリーンアップ、修復、修正に特化したオーディオエディター。代表的には次のようなオーディオレストレーション機能があります。
Spectral Repair（特定音を除去してしまう魔法的合成ツール）
iZotope RXの「Spectral Repair」は、そのソフトウェアを「魔法のツール」と言わしめた代表ツールです。音声ファイルから特定音を取り除くための高度なツール。例えば、あなたが音楽を録音しているときに、背景に不意に鳴った電話の音や風の音が入ってしまったとします。このような時、「Spectral Repair」を使えば、その不要な音だけをピンポイントで消去し、必要な音楽や声の部分はそのままにしておくことができます。
この機能は、音声を視覚化した「スペクトログラム」上で作業を行います。スペクトログラムは、時間に沿って周波数の分布を色や明るさで表したもので、どの部分にノイズがあるのか一目でわかります。ユーザーは、スペクトログラム上でノイズの部分を選択し、「Spectral Repair」を適用することで、そのノイズを自然に消去することができます。
ライブ中の口笛やハウリングもカットできちゃいます。↓
喋っている間に鳴っている携帯着信音を除去↓ビフォーアフター
「安楽死のススメ」岡崎育之助
整音・効果・ミキシング作業で参加したフル尺映画作品がマドリード国際映画祭2023にて「音声品質全般のクオリティ」が最高評価を受けました。
映画「７４歳のペリカンはパンを売る」(2017)
2種類のパンだけを販売し、繁盛しているという浅草の老舗店舗（ペリカン）を取り上げたドキュメンタリー作品。オーナーや職人、お客様はもちろん、機器のメンテナンス業者、カフェオーナーなどを長期間取材。その稀有なパン屋の魅力を伝えています。どなたもそのパンへの愛情にあふれ、出演者はみな雄弁にその思いを語ります。下町の叙情的な風景を切り取った映像も魅力的です。
De-Clip（ 致命的な音割れを修復）
iZotope RXの「De-Clip」機能は、音声があまりにも大きすぎて歪んでしまった（クリッピング）時に、その音声を修復するツール。クリッピングは、マイクロフォンやオーディオインターフェースの入力レベルが高すぎるとき、または音量を誤って大きくしすぎたときに起こります。この問題は、音声が「削がれて」しまい、耳障りな音になったりします。
例えば、あなたが友達のバンドのライブを録音したとします。でも、ボーカルやギターの音が大きすぎて、録音が割れてしまったらどうでしょう。そんな時、「De-Clip」を使うと、その割れた音（クリップノイズ）を修復し、クリアな音質に戻すことができます。
「De-Clip」は、クリップされた音声の波形を分析し、失われた部分を再構築。これにより、元の音に近い形で音声を復元することが可能になります。ライブの録音、インタビュー、さらにはバンドのデモ録音など、一度は失敗したと思われた録音も救うことができる。
しかし、録音端末に音声が入る前にミキサーなどで音割れしてしまった場合（音割れした音を適正レベルで録音した場合）の修復はNG。また、mp３などの圧縮データの場合、うまくリカバリーできないことも多いです。
De-Wind（野外などマイクの風吹かれを自動除去）
iZotope RXの「De-Wind」機能は、屋外での録音時によく遭遇する強風によるノイズを取り除くためのものです。ビーチや山頂で友達との会話や自然の音を録音しているとき、強い風がマイクに当たることで、「ボワボワ」というノイズが録音されてしまうことがあります。この風のノイズは、録音した本来の音を聞き取りづらくする大きな問題となります。
「De-Wind」機能は、このような風のノイズを効果的に除去し、録音した音源のクリアな音質を取り戻すことができます。具体的には、風によって生じる特定の周波数のノイズを分析し、それを除去することで、音源の自然な聞こえ方を保ちながらノイズを減少させます。
この機能は特に、ドキュメンタリー制作、屋外でのイベント録音、自然の音を収録する際など、風のノイズが予期せず録音に含まれてしまった場合に非常に有効です。iZotope RXの「De-Wind」を使えば、風の強い日でも安心して高品質な録音が可能になります。
De-rustle（ピンマイク等の衣スレノイズを強力除去）
「De-rustle」は、ラベリアマイク（小型クリップ式マイク）を使用している際によく起こる問題、すなわち衣服の擦れ音を除去するための特別な機能です。あなたが大切なインタビューを録音しているとき、話者が動くたびにマイクが衣服に擦れ、ざわざわとしたノイズが録音されてしまいます。このノイズは、インタビューの質を下げ、聞き手にとって不快なものとなります。
「De-rustle」機能は、このような擦れ音を効果的に減少させるか、完全に除去することができます。高度なアルゴリズムを使用して、衣服の擦れによるノイズと、話者の声とを区別しノイズだけを除去。クリアで聞き取りやすい音声が得られ、インタビューや映像制作の品質が大幅に向上します。
「De-rustle」は特に、映画制作、テレビ番組、ポッドキャスト、そしてプロフェッショナルなビデオブログなど、高品質な音声が必須とされる場面で重宝されます。この機能により、後から時間をかけて修正する手間が省け、製作プロセスがスムーズになります。
Spectral De-noise（環境音のノイズ解析して除去）
「Spectral De-noise」は、音声や音楽の録音に含まれるバックグラウンドノイズを取り除くための機能です。このツールは特に、静かな環境での録音や、高品質なオーディオが求められる場面で非常に役立ちます。例えば、あなたが図書館で友達との会話を録音したとします。しかし、背景にはエアコンの音や遠くの話し声など、望まないノイズが入ってしまうことがあります。
「Spectral De-noise」を使うと、これらのバックグラウンドノイズを効果的に除去することができます。この機能は、録音された音声のスペクトル（周波数と振幅のグラフ）を分析し、ノイズと音声を区別します。そして、設定したしきい値を下回る振幅のノイズを減算処理によって取り除きます。
例として音楽制作で使われる楽器の録音にも応用できます。録音時に不意に入ってしまったエアコンの音や、外の騒音なども、「Spectral De-noise」でクリアにすることが可能です。また、ポッドキャストやビデオブログでの声の録音においても、よりクリアな音声に変換できます。
このように、「Spectral De-noise」は、様々なシーンでの録音の質を向上させる強力なツールです。不要なノイズを除去し、録音した本来の音声や音楽の美しさを際立たせることができます。
Ambience Match（環境音の合成）
iZotope RXの「Ambience Match」機能は、異なる録音間で背景音（アンビエンス）を一致させるツールです。映画やビデオ制作では、シーン間で音の一貫性を保つことが重要ですが、異なる時間や場所で録音された音声には、背景のノイズレベルや種類が異なることがよくあります。
例えば、映画を撮影していて、一部のセリフを後でスタジオで再録音（アフレコ）することになったとします。スタジオの録音は背景が静かすぎて、実際のロケーションで撮影された他のシーンと音が合わないかもしれません。ここで「Ambience Match」が役立ちます。この機能は、ロケーションでの録音から背景音を分析し、それをスタジオ録音に適用することで、両者間の音の一貫性を持たせます。
「Ambience Match」は、ポストプロダクション作業において欠かせないツールであり、映画、テレビ番組、ポッドキャストなど、様々なメディア制作における音声の品質を向上させるために使用されます。