自主制作映画の予算計画|30万・100万・300万・500万円のモデルと見落としやすい費用
更新日:8月19日

初めて自主制作映画を作るとき、
「結局、何にいくら残しておけばいいのか分からない」
という問題にぶつかります。
カメラ、俳優、ロケ地、照明、美術。
撮影前に見える費用は比較的イメージしやすい一方で、実際に映画を完成させるまでには、撮影が終わった後にもお金がかかります。
映像編集、カラーグレーディング、整音・MA、音楽、字幕、上映データ、映画祭出品などです。
自主制作映画の予算で最も避けたいのは、
「撮影が終わった時点で予算を使い切っている」
状態です。
この記事では、映画の予算を
撮影前
撮影
ポストプロダクション
公開・映画祭
予備費
の5つに分けて考えます。
さらに、30万円・100万円・300万円・500万円の制作費を想定したモデルケースも掲載します。
これから予算表を作る監督・プロデューサーの方は、必要な部分だけでも保存して使ってください。
先に結論|「撮影費」と「映画完成費」は別に考える
映画制作では、どうしても撮影に意識が集中します。
しかし予算表を作る段階では、
「撮影するためのお金」ではなく「映画を完成・公開するまでのお金」
として考えた方が安全です。
私なら、最初の予算表を次の5つに分けます。
予算区分 | 主な内容 |
①企画・準備 | 脚本、ロケハン、キャスティング、許可など |
②撮影 | キャスト、スタッフ、機材、ロケ、交通、美術など |
③ポストプロダクション | 編集、カラー、整音・MA、音楽、VFXなど |
④完成・公開 | 字幕、上映データ、映画祭出品、宣伝など |
⑤予備費 | 延長、撮り直し、素材追加、予想外の出費 |
特に初めて映画を作る場合は、⑤の予備費も最初から確保しておくことをおすすめします。
制作途中では、かなりの確率で
「想定していなかった費用」
が発生するからです。
自主制作映画の予算チェックリスト

まずは、必要になりそうな費用を全部書き出します。
金額が分からなくても構いません。
最初から項目として存在させておくことが重要です。
①企画・プリプロダクション
脚本開発
原作・楽曲などの権利処理
ロケハン
撮影許可申請
キャスティング
リハーサル
衣装準備
美術・小道具
制作進行
撮影保険
スタッフとの事前打ち合わせ
自主制作では監督自身や仲間が担当することで、実費を抑えられる項目も多くあります。
ただし、
無料で作業してもらえる=作業自体が存在しない
わけではありません。
スケジュールを組むときには、費用だけでなく必要な人的リソースとして考えておきます。
②撮影時にかかる費用
撮影では、次のような費用が発生します。
キャスト出演料
撮影スタッフ
カメラ
照明
音声スタッフ
カメラ・照明・音声機材
ロケ地・スタジオ
美術
衣装・ヘアメイク
車両
交通費
宿泊
食事・ケータリング
記録メディア
データバックアップ
ここで、整音・MAを担当する立場から一つだけ強調したいのが、
現場録音は「後で直す前提」にしすぎない
ということです。
ガンマイクやラベリアマイクで録ったセリフ、各ロケーションの環境音、ルームトーンなどは、後の映画の音を作る材料になります。
整音・MAでは録音された素材をかなり改善できます。
ただし、
最初から録音されていない情報を完全に復元できるわけではありません。
「音は撮影後に何とかするから、現場では最低限でいい」
と考えてしまうと、後のMA費用が逆に大きくなることもあります。
撮影時の録音と、撮影後の整音・MAは、どちらか片方を選ぶものではありません。
③撮影後|ポストプロダクションの費用
撮影が終わったら、映画を完成させる工程へ入ります。
代表的な項目は、
映像編集
カラーグレーディング
整音・MA
音楽
音響素材
VFX・CG
タイトル・エンドロール
各種書き出し
などです。
低予算映画でよく起きるのが、
撮影前には
「編集は自分でやる」
「色もDaVinciでやる」
「音もPremiereで何とかする」
と考えていても、実際に作品が形になってくると、
「ここだけは専門家に頼みたい」
という部分が出てくるケースです。
そのため、外注するかどうか決まっていなくても、
ポストプロダクション費そのものを0円で予算表に置かない
ことをおすすめします。
④完成後にも意外とお金がかかる
映画はマスターが完成したら終わり、ではありません。
作品の展開によっては、
字幕制作
英語字幕
DCPなどの上映用データ
映画祭出品料
ポスター
チラシ
予告編
SNS広告
試写会・上映会
会場費
配信用素材
などの費用も発生します。
映画祭を複数回る場合は、1回ごとの金額が小さくても積み上がります。
海外映画祭を視野に入れるなら、翻訳や字幕についても撮影後に初めて考えるのではなく、企画段階で項目だけ作っておくと安心です。
⑤予備費を使い切らない
初めて予算を組む作品ほど、
予備費を5〜10%程度置いておく
という考え方をおすすめします。
これは業界共通の決まりではなく、あくまで自主制作で資金ショートを防ぐための目安です。
たとえば、
撮影日の延長
ロケ変更
キャストの追加日程
機材トラブル
データ修復
撮り直し
アフレコ
VFX追加
編集後の音声トラブル
などが発生したときに使います。
そして予備費が余った場合は、上映・宣伝・映画祭出品へ回せます。
では、実際にどう配分する?予算別モデル

ここからは具体的に考えてみます。
以下は映画業界の「相場」ではありません。
作品内容、撮影日数、スタッフ人数、出演者、ロケーションによって費用は大きく変わります。
あくまで、
「最初の予算表を作るときの叩き台」
として使ってください。
モデル① 総予算30万円
10〜20分程度の短編・少人数制作
項目 | 予算例 |
企画・準備 | 2万円 |
撮影 | 18万円 |
ポストプロダクション | 6万円 |
公開・映画祭 | 1万円 |
予備費 | 3万円 |
合計 | 30万円 |
この規模では、
監督自身が編集
スタッフの一部を仲間で構成
衣装は私物
ロケ地を低コスト化
などの工夫が必要になります。
その代わり、全部を中途半端に外注するより、
自分では難しい工程だけ予算を残しておく
という考え方が現実的です。
たとえば10〜20分の短編で、編集とカラーは自分で行い、最後のセリフ整音だけ専門家へ依頼する、という組み方もできます。
モデル② 総予算100万円
20〜40分前後・映画祭応募を想定
項目 | 予算例 |
企画・準備 | 8万円 |
撮影 | 55万円 |
ポストプロダクション | 22万円 |
公開・映画祭 | 5万円 |
予備費 | 10万円 |
合計 | 100万円 |
100万円になると、
一部スタッフへ報酬を支払う
音声スタッフを入れる
必要な機材をレンタルする
カラーまたはMAを外注する
といった選択肢が増えます。
重要なのは、
撮影に100万円を使わないこと。
完成後に映画祭へ出したいのであれば、撮影終了時点でも20〜30万円程度を残している状態を一つの目安にします。
モデル③ 総予算300万円
40〜90分程度・映画祭や上映を意識した作品
項目 | 予算例 |
企画・準備 | 25万円 |
撮影 | 175万円 |
ポストプロダクション | 65万円 |
公開・映画祭 | 15万円 |
予備費 | 20万円 |
合計 | 300万円 |
この規模になると、完成作品としての品質を考え、
カラーグレーディング
整音・MA
音楽
VFX
字幕
など、一部の仕上げ工程を専門家へ任せる選択が現実的になってきます。
整音・MAについても、
「セリフだけ聞こえるようにする」
という処理から、
作品全体の距離感、環境音、BGM、配置済みSEまで含めた仕上げを考えられる予算になります。
モデル④ 総予算500万円
60〜120分程度・劇場上映や配信も視野に入れる
項目 | 予算例 |
企画・準備 | 40万円 |
撮影 | 280万円 |
ポストプロダクション | 120万円 |
公開・宣伝 | 25万円 |
予備費 | 35万円 |
合計 | 500万円 |
このクラスになると、
「撮影できればいい」
ではなく、
完成後にどこまで作品を展開するか
まで含めて予算を考えたいところです。
ポストプロダクションでは、
編集
カラー
整音・MA
音楽
VFX
字幕
納品素材
を事前に項目化します。
劇場上映を想定する場合は、5.1chなどの音声仕様が必要かどうかも早めに確認しておきます。
MA予算はいくら取っておけばいい?
これは作品尺と録音状態で大きく変わります。
Hybrid Sound Reformの現在の料金を例にすると、映画祭応募向けの標準的な整音・MAでは、
40〜60分:10〜18万円程度
61〜90分:15〜25万円程度
91〜120分:22〜35万円程度
を一つの目安としています。
さらに劇場公開・配信などを想定して、背景音や空間表現まで細かく作り込む場合は、これより大きな予算になります。
ここで重要なのは、
この金額を最初から確定させる必要はない
ということです。
企画段階では、
「音の仕上げに15万円程度は残す」
「長編なら30万円程度を仮置きする」
という方法でも構いません。
作品尺や素材状態が見えてきた段階で、正式な見積もりへ修正します。
MAの見積もりはいつ取ればいい?
おすすめは3段階です。
①企画・撮影前
まだ素材がなくても、
想定尺
作品ジャンル
撮影方法
上映予定
が分かれば、大まかな予算感を確認できます。
この段階では正式見積もりではなく、
予算表に入れるための仮置き
で十分です。
②撮影後〜ラフカット
実際の録音状態が見えてくるため、予算精度が上がります。
屋外撮影が多かった、アフレコが必要になった、想定より長尺になった、といった条件もこの段階で見えてきます。
③ピクチャーロック前後
完成尺と作業内容が確定すれば、正式な作業範囲と料金を決められます。
映画祭締切の直前になって初めてMA先を探すより、ラフカット段階で一度相談しておく方がスケジュールを組みやすくなります。
予算が足りなくなったら、何から削る?

ここも自主制作では現実的な問題です。
私なら、
作品の品質に直結する工程を一律に値下げする前に、作品そのものを少しシンプルにできないか
を考えます。
たとえば、
ロケーション数を減らす
撮影日を整理する
不要な機材レンタルを減らす
衣装変更を減らす
大掛かりな美術を重要シーンへ集中する
VFXが必要なカットを減らす
などです。
逆に、
セリフが録れていない
データのバックアップがない
編集後の仕上げ予算が0円
映画祭へ出すお金がない
という状態になると、映画を完成・公開するところで止まってしまいます。
低予算映画では、
すべてを80点にするより、重要なところへ予算を集中させる
という考え方が向いていると思います。
「撮影費を豪華にする」より「完成できる予算」を作る
カメラやレンズは分かりやすいため、予算を使いたくなります。
しかし観客は、
「この映画は何円のレンズで撮ったのか」
を知りません。
完成作品として体験します。
映像、芝居、音、編集、色、音楽。
その全部が組み合わさって映画になります。
だからこそ、
撮影の予算を決めると同時に、完成するためのお金を残しておく。
これが初めて映画を作る監督に、一番おすすめしたい予算の考え方です。
コピペ用|自主制作映画の予算表
最後に、企画時にそのまま使える項目をまとめておきます。
企画・準備
脚本・原作権:____円
ロケハン・許可:____円
キャスティング:____円
リハーサル:____円
美術・衣装準備:____円
その他:____円
撮影
キャスト:____円
カメラ:____円
照明:____円
音声:____円
制作スタッフ:____円
機材:____円
ロケ地:____円
美術・衣装:____円
交通・宿泊:____円
食事:____円
記録メディア:____円
ポストプロダクション
映像編集:____円
カラーグレーディング:____円
整音・MA:____円
音楽:____円
VFX・CG:____円
タイトル等:____円
完成・公開
字幕・翻訳:____円
上映データ:____円
映画祭出品:____円
ポスター・宣伝:____円
試写・上映:____円
予備費
予備費:____円
総制作費
________円
この表を作った時点で、
「整音・MAが0円」
「映画祭出品が0円」
「予備費が0円」
になっている場合は、
一度撮影予算を見直してみる価値があります。
まだ作品を撮っていなくても、MA予算の相談はできます
Hybrid Sound Reformでは、自主制作映画・短編映画・ドキュメンタリーの整音・MAを行っています。
完成素材がなくても、
想定尺
ジャンル
撮影方法
上映・映画祭予定
が分かれば、
「MA費を予算表にどの程度仮置きすればよいか」
という段階からご相談いただけます。
すでに編集まで進んでいる作品については、プレビュー映像や素材状態を確認したうえで、より具体的な見積もりをご案内します。
まずは「撮影で全部使い切らない」。
それだけでも、映画完成直前の選択肢はかなり増えます。




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