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Premiereだけで映画の音は仕上がる?できること・難しいことを整理します

「できればPremiereの中だけで完結したい」これは自主制作映画や短編を作る監督・編集者なら、一度は考えることだと思います。


premire pro 画面

結論から言うと、Premiereだけでも“かなり整える”ことはできます。ただし、映画として最後まで見たときの聞きやすさや、映画祭応募前に不安の残らない仕上がりまで求めると、Premiereだけでは苦しくなる場面も少なくありません。


最近のPremiereは、Essential Soundパネルを中心に、音声の種類分け、ラウドネス調整、セリフ補正、ノイズ低減、AIベースのEnhance Speech、自動ダッキング、トラック単位のミキシングまで行えるようになっており、以前より“仮整音”の精度はかなり上がっています。


ただ、「編集ソフトとして音も触れる」ことと、「映画の音仕上げとして安心できる」ことは、似ているようで別の話です。この記事では、その境目を整理します。


Premiereで今できる整音


まず最初に、Premiereを過小評価する必要はありません。


Premiereには、Essential Soundパネルでの音声タイプの自動タグ付け、ラウドネスの自動調整、ダイアログ修復、明瞭度の改善、リバーブ処理、Enhance Speech、自動ダッキング、Audio Track Mixerによるトラック単位の音量・パン・エフェクト管理など、映像編集の中で必要になる実用的な音声調整機能が揃っています。さらに、ソースの音声チャンネル設定やマルチチャンネル/5.1関連の扱いも可能です。


具体的には、こんなことはPremiere内でも十分に対応しやすいです。


  • セリフの音量ばらつきをある程度そろえる

  • 環境ノイズやハムノイズを軽く抑える

  • BGMがセリフを邪魔している箇所を自動ダッキングで整理する

  • カットごとに音量を微調整して、急な音の飛び出しを防ぐ

  • ざっくりした聞きやすさを作る

  • 仮MA・仮ミックスとして試写用の状態まで持っていく


自主制作の現場では、ここまでできるだけでもかなり助かります。とくに、撮影条件が良く、収録音がそこまで破綻していない作品なら、Premiereだけで“普通に見られる状態”までは十分狙えます。


直せる問題と直しにくい問題


ここがいちばん大事です。


Premiereで直しやすいのは、問題の種類が単純なものです。たとえば、一定の空調音、軽いヒスノイズ、セリフとBGMの音量差、少しだけこもった声、カット間の軽いレベル差などは、Premiere内の機能でも改善しやすい部類です。AdobeもEssential SoundやRepair Dialogue、Enhance Speechを、こうした一般的な音声改善の用途として案内しています。


一方で、直しにくいのは問題が複数重なっている音です。

たとえば、


  • 役者の声が遠く、部屋鳴りも強い

  • 生活音や交通音がセリフとかぶっている

  • マイクの位置がカットごとに大きく違って聞こえる

  • 収録時点で音割れしている

  • 屋外シーンで風や服擦れが目立つ

  • 同じ会話なのにカットが変わるたび音の空気感が変わる


こういった問題は、単にノイズを下げれば済む話ではありません。ノイズを消すと今度は声が痩せる、明瞭度を上げると耳に痛い、Enhance Speechで聞き取りやすくなっても映画の空気感まで変わる、ということが起こります。


つまり、難しいのは「何を消すか」より、何を残すかです。


映画の音では、完全な無音や不自然なクリーンさが、逆に映像の説得力を壊すことがあります。ここはYouTube動画やトーク動画の補正感覚とは少し違います。



映画の音仕上げで残る課題


Premiereだけである程度整っても、映画の音として最後に残りやすい課題があります。


お芝居のイメージ

ひとつは、シーン全体の統一感です。

カット単位で見ると問題がなくても、作品を頭から通すと、場面ごとの声の近さ、環境音の密度、BGMの押し出し方、静かな場面の“間”の作り方などにムラが出ます。映画は1カットずつではなく、連続体として聞かれるので、ここが意外と目立ちます。


もうひとつは、セリフ編集そのものです。

聞きにくい原因が、単純な音量不足ではなく、


  • 語尾だけ落ちている

  • 子音が埋もれている

  • ブレスや服擦れが集中している

  • ルームトーンが足りず、切り貼り感が出る


といった場合、必要なのは“エフェクトをかけること”より、細かい編集判断です。この工程は、Premiereでも不可能ではありませんが、作品尺が長くなるほど手間も精度差も大きく出ます。


さらに、映画祭応募や上映を意識すると、試写環境では気づかなかった違和感も表面化しやすくなります。ノートPCや小型スピーカーでは気にならなかったノイズ、BGM過多、低域の濁り、セリフの抜け不足が、上映環境では一気に露出することがあります。


Adobe自身も、PremiereからAuditionへシーケンスを送ってラウドネス調整やミックスを進め、Premiereへ戻す流れを案内しています。つまり公式にも、Premiere単体の調整だけでなく、必要に応じてより専用的な音声工程へ進む考え方が用意されています。


外注した方が早いケース

Premiereだけで頑張るより、最初から外注した方が早いケースはかなりはっきりしています。

たとえば、


  • セリフが作品価値の中心にある

  • ロケ音に不安がある

  • 収録環境が統一できていない

  • 監督自身が編集と仕上げを兼任していて時間がない

  • すでに画は固まり、音で足を引っ張りたくない

  • 映画祭応募前に“最後の不安”を減らしたい


このあたりに当てはまるなら、Premiere内で延々と試行錯誤するより、音の仕上げを切り出した方が結果的に早いことが多いです。


特に自主制作では、監督や編集者が限られた時間の中で全部を背負っています。そうすると、音はどうしても「最後に残った時間で調整するもの」になりがちです。


ですが、観客の印象としては、音の違和感は映像以上に“安さ”や“未完成感”として伝わることがあります。

Premiereでできる整音は、今やかなり実用的です。ただしそれは、Premiereが万能になったという意味ではなく、仮仕上げの精度が上がったと捉える方が実務的です。

「このままでも成立するかもしれない」「でも、上映や応募を考えると少し不安がある」

その感覚があるなら、だいたいその勘は当たっています。


Premiereでの調整だけでは不安が残る場合は、映画祭応募前の整音・MAの進め方もこちらでまとめています。



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