Premiere Proで映画のセリフノイズを消す方法|標準機能でできる整音と限界
- Sound Reformer / yamakaWA

- 3月19日
- 読了時間: 8分
更新日:8月19日

自主制作映画をPremiere Proで編集していると、
「セリフに空調音が入っている」
「屋外の車の音が気になる」
「声が遠くて聞き取りづらい」
「とりあえずノイズ除去を強くかけてみた」
という場面は少なくないと思います。
現在のPremiere Proには、会話音声のノイズを軽減したり、声を聞き取りやすくしたりする機能が用意されているため、収録状態が比較的良ければ、Premiereだけでもかなり聞きやすい状態まで整えることができます。
実際、自主制作映画なら、
「まず自分でPremiereの中だけで何とかしてみたい」
という考え方は、ごく自然だと思います。
ただし映画の場合、少し注意したいことがあります。
1カットのセリフをクリアにすることと、映画全体の音を自然に仕上げることは、
実は別の作業だからです。
この記事では、まずPremiereで自分で試せる基本的なセリフ処理を紹介しながら、
「どこまでは自分で直せるのか」
そして、
「どこから先は専門的な整音・MAを検討した方がよいのか」
を、実際に映画作品の整音を担当している立場から整理します。
Premiere Proでセリフノイズを減らす基本的な考え方
まず、Premiereを過小評価する必要はありません。
最近の映像編集ソフトには、以前なら音声編集ソフトで行っていたような処理まで搭載されるようになっています。
たとえば、
一定の空調音やヒスノイズを軽くする
セリフを聞き取りやすくする
声の音量差をある程度整える
低域の不要な音を抑える
BGMがセリフを邪魔しないように調整する
といった処理です。
収録状態が良い映画であれば、これだけでもかなり改善します。
重要なのは、最初から「全部消そう」としないことです。
まず試したいのは「ノイズを少し下げる」こと
たとえば室内撮影で、
「サーッ」
という空調音やカメラ周辺の一定したノイズが入っている場合。
Premiereの会話音声向けの補正機能を使うことで、目立ちにくくできる場合があります。
ここでありがちなのが、
ノイズが聞こえなくなるまで処理量を上げてしまうこと。
確かにノイズは減ります。
しかし同時に、
声が細くなる
子音が不自然になる
声の高域がざらつく
水中のような質感になる
声だけが映像から浮く
といった問題が起きることがあります。
映画の場合、ノイズが少し残っていることよりも、
「人間の声として不自然になっていること」
の方が気になるケースもあります。
そのため私は、ノイズ処理をするとき、
「どこまで消せるか」
より、
「どこまで自然な声を残せるか」
を優先しています。
Premiereで比較的直しやすいノイズ
すべてのノイズが同じように処理できるわけではありません。
比較的対応しやすいのは、
一定して鳴っている空調音
軽いヒスノイズ
低域の振動音
セリフとBGMの単純な音量差
カット間の軽い音量差
などです。
こうした問題であれば、Premiere標準機能だけでも改善できる可能性があります。
映画全体の収録状態が良く、
「数カットだけ少し気になる」
という程度なら、まず自分で調整してみるのも十分ありだと思います。
Premiereだけでは難しくなりやすい音
一方で、映画MAをしていて難しいと感じるのは、
複数の問題が同時に起きている素材です。
たとえば、
役者の声が遠い+部屋の反響が大きい
車の走行音がセリフに重なっている
風がセリフそのものに重なっている
衣擦れが言葉と同時に鳴っている
他の出演者の声が同じマイクへ入っている
カットごとにマイクとの距離が違う
収録時点ですでに音割れしている
といったケースです。
こうした音では、
「ノイズだけを消して、セリフだけを完全に残す」
ことが簡単ではありません。
ノイズを強く削れば声も変わります。
声を明瞭にすると今度は背景との馴染みが悪くなります。
映画の整音では、このバランスをカットごとに判断していきます。
「ノイズが消えたのに、なんだか声が浮く」のはなぜ?

ここが、動画編集と映画MAの違いが出やすいところです。
セリフだけを単独で聞けば、
「かなり綺麗になった」
と感じることがあります。
ところが映像と一緒に再生すると、
声だけが画面の手前に張り付いているように聞こえる。
そんなことがあります。
理由は、映画のセリフには音質だけでなく、
カメラとの距離
部屋の広さ
壁からの反響
周囲の環境音
他の人物との位置関係
前後カットとのつながり
が関係しているからです。
ノイズ除去によって背景成分を大きく取り除くと、
役者は屋外に立っているのに声だけスタジオ収録のように聞こえる、
ということさえあります。
つまり、
綺麗な音=映画として自然な音
とは限りません。
アフレコなら綺麗に録れば解決する?
これも映画制作ではよくある問題です。
現場音が使えない場合、アフレコを行えばノイズのないセリフを録音できます。
しかし、アフレコした声は録音状態が良いからこそ、
逆に映像から浮きやすくなります。
最近担当した実写映画でも、
ほぼ全編にアフレコを使用した作品がありました。
その作品では、以前制作した作品で
「アフレコのセリフが映像から少し浮いて聞こえた」
という反省があったそうです。
そこで次の作品では、完成時の整音・MAを外部へ依頼する判断をされました。
アフレコ素材を自然に聞かせるためには、
単にリバーブを加えるだけではなく、
声の距離感
EQ
音量
周囲の環境音
カットごとの空間
他の役者とのバランス
などを映像に合わせて調整していきます。
これはPremiereでも理論上可能ですが、映画全編となると作業量も判断量もかなり増えます。
1カットでは良くても、映画全体では違和感が出る
Premiereで自分で整音しているときに、特に気をつけてほしいポイントがあります。
それは、
同じカットを何度も聞いているうちに、その音に慣れてしまうこと。
ひとつひとつのカットでは問題がないように感じても、作品を頭から再生すると、
この場面だけ声が近い
次のカットだけ急に部屋鳴りが増える
BGMが入るとセリフが急に弱くなる
屋外から屋内へ切り替わった瞬間だけ不自然
同じ会話なのに人物ごとに声質が違う
といった問題が見えてきます。
映画は1カットではなく、何十分、場合によっては2時間近く連続して鑑賞されます。
そのため、最終段階では、
「各カットを綺麗にする作業」から「作品全体をつなぐ作業」へ視点を変える必要があります。
Premiereだけで仕上げても問題ない作品もあります
ここまで読むと、
「Premiereでは映画の整音はできないのか」
と思われるかもしれません。
そんなことはありません。
たとえば、
撮影時の録音状態が良い
マイク位置が安定している
屋内中心
セリフが十分明瞭
BGMやSEが整理されている
短編作品
大きなノイズトラブルがない
といった作品なら、Premiereだけでも十分成立するケースがあります。
特に試写版や編集確認用の仮ミックスなら、非常に便利です。
問題になるのは、
すでに自分でかなり調整したのに、まだ何となく違和感が残っている場合です。
こんな状態なら、整音・MAを外注するタイミング
次のような症状が残っている場合は、一度第三者に聞いてもらうことをおすすめします。
ノイズ除去をすると声が不自然になる
セリフ音量を上げても聞き取りにくい
カットが変わると声質が変わる
アフレコした声が映像から浮く
BGMを下げてもセリフが弱い
屋外シーンだけ急に作品の音が安っぽく感じる
試写で「セリフが聞きづらい」と言われた
ヘッドホンでは問題ないのにスピーカーでは違和感がある
映画祭応募・劇場上映前に少し不安がある
こういう場合、
さらにエフェクトを追加するより、
今の素材のどこに問題があるのかを一度整理した方が早い
ケースがあります。
自分で整音してから外注しても大丈夫です
「途中までPremiereで自分で触ってしまったので、もう外注できない」
ということはありません。
実際、自主制作映画では、
監督・編集者がPremiereで仮整音まで行い、最後の仕上げだけMAへ渡す
という進め方も珍しくありません。
その場合は、PremiereからAAFなどの編集情報を書き出し、音声素材を引き継いで作業します。
PremiereからMAへ渡す際のAAF作成については、
でも詳しく解説しています。
「自分でできるところまで」と「プロへ渡すところ」を分ける
自主制作映画では、すべてを外注できる予算があるとは限りません。
そのため、
Premiereでできる部分は自分で行い、
専門作業が必要になったところだけ外部へ依頼する、
という考え方は合理的だと思います。
重要なのは、
どこまで自分でやるかを最初から決めることではありません。
一度やってみて、
「ここまではできた」
「ここから先は時間がかかりすぎる」
「何をやっても違和感が取れない」
となった段階で、外注を検討しても遅くありません。
映画の音は、ノイズを完全に消すことが目的ではありません。
セリフが自然に伝わり、背景音、音楽、映像が同じ世界に存在しているように感じられること。
最終的には、そこが一番重要だと考えています。
映画祭・上映前に音が気になっている方へ
Hybrid Sound Reformでは、自主制作映画・短編映画・ドキュメンタリーを中心に、セリフ整音、音声修復、背景音整理、BGM・配置済みSEのミックスなどを行っています。
Premiereである程度仕上げた作品でも問題ありません。
「この状態で上映して大丈夫なのか」
「このノイズはまだ改善できるのか」
「アフレコがどうしても馴染まない」
といった段階から、素材状態を確認できます。
映画祭応募前の整音・MAについては、映画祭対応MAページで詳しくご案内しています。




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