テレビドラマと劇場公開映画の音は何が違う?
- Sound Reformer / yamakaWA

- 6 日前
- 読了時間: 5分

劇場映画的サウンドデザインの考え方
映像作品を作り始めたばかりの監督から、よく聞く言葉があります。
「音はちゃんと聞こえているはずなのに、
なぜか“映画っぽく”ならない」
編集を終え、音量も揃えた。
ノイズもある程度取った。
それでも完成した作品を見返すと、
どこかテレビドラマや配信ドラマのように感じてしまう──。
その違和感の正体は、
“音の考え方”そのものの違い にあります。
この記事では、
テレビドラマと映画の音は何が違うのか、
そして 映画的サウンドデザインとは何か を、
MA作業に詳しくない新人監督にも分かる言葉で解説します。
「聞こえる音」と「感じさせる音」の違い
テレビドラマの音づくりで最も重視されるのは、
情報の明確さです。
セリフがはっきり聞こえる
効果音が分かりやすい
BGMが感情を補足する
視聴者は、家事をしながら、スマートフォンを見ながら、
“ながら視聴”していることも多いため、
音は 説明的で親切 であることが求められます。
一方、映画ではどうでしょうか。
映画館では、
暗い空間でスクリーンと音に集中します。
観客は作品の世界に 没入する準備ができている 状態です。
そのため映画の音に求められるのは、
「分かりやすさ」よりも
“世界観としての説得力”です。
映画の音は「目立たないほど、強い」
新人監督がまず驚くのが、
映画の音は意外なほど主張しない という点です。
効果音が派手すぎない
BGMが前に出すぎない
セリフの裏で空気が静かに鳴っている
しかし、それでいて
観客は強く世界観を感じ取ります。
これは、映画の音が
「注意を引くため」ではなく
「空間を成立させるため」
に設計されているからです。
音は“聞かせるもの”ではなく、
その場に存在させるもの。
ここが、テレビドラマとの大きな分岐点です。
背景音(アンビエンス)の扱いが決定的に違う

テレビドラマでは、背景音は最低限で済まされることも少なくありません。
セリフが聞こえればOK
編集点で多少切れても問題になりにくい
しかし映画では、背景音こそが空間そのものです。
部屋の広さ
外の世界との距離
人の気配
時間帯や温度
これらを観客に伝えているのが、背景音
(アンビエンス)です。
映画的サウンドデザインでは、
「何も起きていない瞬間」にも
音で空気をつくり続ける ことが重要になります。
なぜ映画の無音は「怖い」「美しい」のか
映画では、無音が強い印象を持つことがあります。
それは本当に“音がない”からではありません。
実際には、
ごく小さな環境音
微かな残響
空間の気配
が存在しています。
これがあるからこそ、
観客は「静けさ」や「緊張」を感じ取れます。
新人監督がよくやってしまうのが、
音を完全に切ってしまうこと。
するとそれは演出ではなく
「音が抜けた事故」に聞こえてしまいます。
MAとは「整える作業」ではなく「設計し直す工程」
MA(マルチオーディオ)と聞くと、
「最終調整」「仕上げ作業」
という印象を持つ方も多いでしょう。
しかし映画におけるMAは、
単なる調整ではありません。
セリフ
効果音
背景音
BGM
これらを一つの世界として再構築する工程
それが映画のMAです。
テレビドラマ的な音は
「各要素が分かりやすく並んでいる」状態。
映画的な音は
「すべてが同じ空気の中で呼吸している」状態。
この差が、
完成度に直結します。
新人監督が映画的サウンドに近づくための視点

キャリアの浅い監督が、
いきなり高度な音響設計を理解する必要はありません。
まずは、次の視点を持つだけで大きく変わります。
このシーンの“空気”はどんな質感か
セリフは、空間の中でどう聞こえるべきか
音が感情を説明しすぎていないか
静けさは「演出」になっているか
これらを意識するだけで、
音は「足し算」から
「設計」へと変わります。
映画的サウンドデザインがもたらすもの
音が映画的に設計されると、
次のような変化が起こります。
役者の芝居が立体的に見える
映像の説得力が増す
カットのつながりが自然になる
観客が物語から離れにくくなる
多くの監督が整音・MA後にこう言います。
「やっと映画になった気がした」
これは感覚論ではなく、
音が世界観を支え始めた結果です。
結論:映画の音は「演出」ではなく「世界そのもの」
テレビドラマと映画の音の違いは、
技術の差ではありません。
思想の違いです。
テレビドラマの音:伝えるための音
映画の音:存在させるための音
映画的サウンドデザインとは、
音で目立つことではなく、
観客を世界の中に閉じ込めること。
新人監督であっても、
この視点を持つだけで、
作品の完成度は確実に変わります。
そして何より──
音は、映画の没入感を高める最大のポイントです。
映像と同じくらい、
音にも目を(耳を)向けてみてください。
そこに、「映画らしさ」の正体があります。
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